個人事業、または中小企業の経営者で、事業資金の借り入れを検討されているあなた。どうやって資金調達したらいいのか、お悩みではありませんか?
・新規開業するにあたって資金が必要
・事業の拡大ために融資を受けたいが、民間金融機関から借りられなかった
・さまざまな理由で経営状況が悪化しており、何とか立て直したい
こんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ日本政策金融公庫からの借り入れも検討してください!
日本政策金融公庫は、100%政府出資の金融機関。政府の中小企業支援政策の一環で、中小個人企業を積極的に支援している会社です。民間金融機関ではなかなか扱ってくれない、中小個人企業向けの融資制度も用意されているんです。
この記事では、日本政策金融公庫にはどんな融資制度があるのか、詳しくチェックしてみたいと思います。特に、これから新しく起業を考えている方、民間金融機関で借り入れできなかった方は要チェックですよ!ぜひ参考にしてみてください。
1. 「日本政策金融公庫は借り入れしやすい」と言われる3つの理由
事業を営んでいれば、日常的にかかる経費の他にも一時的な資金が必要になる場面は少なくありません。店舗の拡大、新製品の開発、商品を大々的にPRするためのキャンペーンを打つこともあるでしょう。新規開業時にも、もちろん資金が必要になりますし、経済情勢の変化の影響で一時的に赤字に陥らないとも限りません。
そんな時に、多くの中小個人企業の経営者が検討するのが日本政策金融公庫の融資制度。日本政策金融公庫は、中小企業が利用しやすい金融機関なのですが、一体なぜ「日本政策金融公庫は借り入れしやすい」と言われているのでしょう?
その答えは、日本政策金融公庫の運営体制と、融資制度に大きな特徴があるんです!
・中小個人事業向けに積極的な融資を行っている
・低金利で、長期間借りられる
・起業・独立時の開業資金の融資が受けられる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1 中小個人事業への積極的な融資
日本政策金融公庫は、100%政府出資の金融機関。政府の中小企業支援政策の一環として運営されており、民間金融機関では敬遠されがちな中小個人企業への融資も積極的に行っているのです。中小個人企業だからという理由だけで最初から断られてしまうことはありません。民間金融機関に比べて制度としての間口が広く、中小個人企業が利用しやすいという特徴があります。もちろん、借り入れには事業計画書(新規開業の場合は創業計画書)等の書類提出や、審査があります。その審査に通過することが条件になりますが、味方がついてくれたようで何だか心強いですよね!
1-2 低金利で、長期間借りられる
日本政策金融公庫では、長期間の借り入れでも低金利で融資が受けられることが大きな特徴です。他の金融機関での借り入れは1年程度の短期融資となることが多いのですが、日本政策金融公庫では、例えば事業の運転資金は5年以内、設備資金は10年以内、特定設備資金は20年以内といった、他と比べて非常に長い期間設定が可能。コツコツ返済できるという観点からも「借りやすい」融資制度と言えそうですね。
具体的な利率は、利用する融資制度や利用条件によって異なります。詳しくは日本政策金融公庫の公式サイトで確認することができます。
1-3 起業・独立時の開業資金融資を受けられる
民間金融機関は営利目的で融資事業を行っています。返済が滞る可能性があれば最大限排除するというスタンスですので、中小個人企業あるいは起業・独立開業したばかりの事業者への融資はどうしても敬遠されてしまいます。ほぼ無理だと思ってよいでしょう。
これに対し、日本政策金融公庫は政府系金融機関。政府の中小企業支援政策の一環として運営されており、民間金融機関で扱われない部分の補完を行う会社です。中小個人企業あるいは起業・独立開業したばかりの事業者にも融資をしてくれる可能性が高くなっているんですね。詳しくは後述する「3-1 国民生活事業」で解説しますが、新規開業する方や若者、女性起業家を支援する融資制度もあります。これは他の民間金融機関にはない特徴なので、新たに起業する創業者が、日本政策金融公庫での融資を真っ先に検討するのも頷けますね!
また、過去に事業に失敗した人を対象とした貸付や、無担保・無保証人で利用できるなど、事業形態、資金状況に合った融資制度があるという点でも、一般的な定型融資制度より借りやすいと言えそうです。
2.日本政策金融公庫での融資実績
ここまでの内容で、日本政策金融公庫は中小個人企業が利用しやすい、融資に積極的な会社であるということがお分かりいただけたでしょうか。
建前は分かったけど・・・実際のところ、ちゃんと融資しているの?
という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。ごもっともです。
日本政策金融公庫の融資実績は公式サイト上に掲載され、詳しく確認できるようになっていますが、この章では特に気になる融資先・融資金額について、ピックアップしてご紹介したいと思います。
2-1 主な融資先
今、日本にどのくらいの数の中小個人企業があるかご存知ですか?総務庁「事業所・企業統計調査」によれば、中小企業数(法人登記されている会社数+個人事業主数)は約432.6万社。全企業数に占める割合はなんと99.7%にも上ります!日本にある会社のほとんどが個人事業を含めた中小企業なんですよ、ちょっとオドロキですよね。
日本政策金融公庫の国民生活事業における融資先は、主に「中小企業」です。特に小企業が中心で、その半数は個人企業。平成27年度の普通貸付及び生活衛生貸付の合計融資先数は886,207企業となっています。このうち、従業員数4人以下の企業は70.9%、9人以下までの企業を合わせるとなんと89.7%!融資を受けた企業のうち10社中9社が、小企業あるいは個人規模ということになります。
また、平成 27 年度の創業融資実績(創業前及び創業後 1 年以内)は 26,465 企業(前年度比 102%)となっています。この数字は、企業数ベースでは過去10年で最高となった平成 26 年度を上回る水準で推移しているとのこと(平成28年5月11日時点)。「そこそこ大きな会社じゃなきゃ借り入れはできない」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、日本政策金融公庫においては、決してそんなことはないのです。
2-2 融資金額
日本政策金融公庫公式サイトによると、国民生活事業の平成27年度の融資金額合計は2兆2,990億円です。 1先あたりの平均融資残高は689万円ですが、融資金額 300万円以下は33.9%、500 万円以下は19.9%。融資金額500万円以下の小口融資が合計53.8%と、半数以上を占めています。また、融資を受けた企業のうち81.3%は無担保融資で、小口の無担保融資が主体となっていることが分かります。
性別・年齢別の動向としては、女性と若者への融資実績が増加。特に他の層と比較して、融資金額 300 万円以下の小口融資の増加が顕著で、小口融資を利用した“プチ起業”(自らのライフスタイルを大切にした小規模創業)の意識が高まっているようです。
これらの実績は、「4.借り入れに関する相談窓口」でもご紹介していますが、融資制度に関する相談窓口の設置、女性や若者向け融資など時代のニーズに合った制度の創設、セミナー等の施策を行っている成果とも言えるでしょう。
詳しい融資実績は、日本政策金融公庫の公式サイトから「業務概要」をチェックしてみてください。
3. 日本政策金融公庫で扱っている融資制度
さてさて、日本政策金融公庫の融資実績が分かったところで、実際にどのような融資制度があるのか、知りたいですよね?
日本政策金融公庫は、もともと「国民生活金融公庫」「中小企業金融公庫」「農林漁業金融公庫」の3つが前身で、平成20年に統合発足した株式会社です。現在はそれぞれの公庫の事業を引き継いで、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3事業を展開しています。
日本政策金融公庫の融資制度は非常に数が多く、内容も多岐に渡ります。事業規模や事業内容による制約、利用目的、創業年数など個別の利用条件もあり、全ての制度を利用できるわけではありません。また、組み合わせて利用できる制度もあります。
各融資制度の詳細内容は公式サイトで確認するか、日本政策金融公庫に相談していただくとして、ここでは利用シーン別に
・新規開業時に融資を受けたい
・無担保、無保証人で融資を受けたい
・すでに営んでいる事業をさらに充実、発展させたい
・悪化した経営状況を立て直すために融資を利用したい
・自分が利用できる融資制度がわからない
といったケースを取り上げてご紹介します。
融資限度額、融資期間等は利用する融資制度によって異なります。詳細内容は公式サイトで確認しましょう。
3-1 新規開業時に利用できる融資制度
日本政策金融公庫の国民生活事業では、新たに起業する方、第二創業、再チャレンジする方を対象とした「新企業育成貸付」が用意されています。
①新規開業資金
新たに事業を始める方、事業開始後おおむね7年以内の方
②女性、若者/シニア起業家支援資金
女性または30歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
③再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
廃業歴等のある方など一定の要件に該当する方で、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
④新事業活動促進資金
経営多角化、事業転換などにより、第二創業などを図る方
⑤中小企業経営力強化資金
新事業分野の開拓のために事業計画を策定し、外部専門家(認定経営革新等支援機関)の指導や助言を受けている方
また対象となる企業の規模、融資金額等は異なりますが、中小企業事業でも同様の制度が用意されています。
3-2 無担保、無保証人で利用できる融資制度
借り入れで心配なのは、利息だけではありません!担保(不動産・有価証券等)の提供や保証人がいないと借り入れは難しいのですが、実際にはなかなか用意できないケースも多いのではないでしょうか?日本政策金融公庫には、無担保、無保証人で利用できる融資制度があるんです。
①新創業融資制度
「新創業融資制度」は、国民生活事業の中でも、以下の融資制度を利用する場合に付加できる特例措置です。原則として法人の場合は無担保・代表者の方のみの保証、個人の場合は無担保・無保証人での融資を受けられるものです。(所定の審査を通過する必要があります)
・新規開業資金
・女性、若者/シニア起業家資金
・再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)
・新事業活動促進資金
・食品貸付
・生活衛生貸付(一般貸付、振興事業貸付および生活衛生新企業育成資金に限る)
・普通貸付(食品貸付または生活衛生貸付(一般貸付)の対象となる方が必要とする運転資金に限る)
・企業活力強化資金
・IT資金
・海外展開・事業再編資金
・地域活性化・雇用促進資金
・事業承継・集約・活性化支援資金
・ソーシャルビジネス支援資金
・環境・エネルギー対策資金
・社会環境対応施設整備資金
・企業再建資金(第二会社方式再建関連に限ります。)
②担保を不要とする融資
税務申告を2期以上行っている方が対象です。これまでの事業実績や事業内容のほか、所得税等を完納していることなどを確認の上、利用の可否が審査されます。
3-3 すでに営んでいる事業の向上を目指す企業活力強化貸付
すでに営んでいる事業をさらに発展させるための資金を融資する制度です。店舗の拡大や情報化への投資、事業の海外展開など、企業力向上を目指す目的で利用します。
①企業活力強化資金
卸売業、小売業、飲食サービス業、サービス業または一定の要件を満たす不動産賃貸業を営む方で、店舗の新築・増改築や機械設備の導入を行う方など
②IT資金
情報化投資を行う方
③海外展開・事業再編資金
海外展開を図る方など
④地域活性化・雇用促進資金
承認企業立地計画などに従って事業を行う方または雇用創出効果が見込まれる設備投資を行う方など
⑤ソーシャルビジネス支援資金
社会的課題の解決を目的とする事業を営む方など
⑥事業承継・集約・活性化支援資金
事業を承継する方など
3-4 経営安定化を目指すセーフティネット貸付
セーフティネット貸付は、一時的に資金繰りに支障をきたしているが中長期的には回復が見込まれる中小個人企業の方を対象とした融資制度です。経営の安定化を図る目的での利用となります。
①経営環境変化対応資金
売上減少など経営状況が悪化している方
②金融環境変化対応資金
取引金融機関の経営破たん等で資金繰りに困難を来している方
③取引企業倒産対応資金
取引企業などの倒産により経営に困難を来している方
3-5 自分が利用できる融資制度がわからないときは「融資制度検索」
利用シーンや事業規模以外に、事業内容から利用できる融資制度を検討したいといった場合もありますよね。
例えば、国民生活事業では生活衛生関係の事業を営む方向けに「生活衛生貸付」があります。これは飲食店営業、食肉販売業、理容業、美容業、旅館業、興行場営業、浴場業、クリーニング業などを営む方が対象で、利用目的によってさらに細分化されています。
また農林水産事業では、農林水産事業者および食品産業向けの資金調達支援を行っており、農業・林業・漁業ごとの利用目的に応じた融資制度が設定されています。
このように融資制度が多岐にわたるため、あなたの状況に合ったものを探すのは少々大変かもしれません。そこで、困ったときは日本政策金融公庫の公式サイト内「融資制度検索」ページを活用してみましょう。事業内容や利用目的での検索や、組み合わせ検索が可能です。
日本政策金融公庫「融資制度検索」
4.借り入れに関する相談窓口
日本政策金融公庫では、政府方針「地方創生」、「一億総活躍」に貢献するため、融資事業を通じたさまざまな施策を行っています。例えば、創業に関する電話相談に専門スタッフが対応する「創業ホットライン」、女性・若者に対象を絞った専門スタッフによる予約相談の開催、女性創業者を特集した事例集の発行、UIJターンを伴う創業者を対象としたセミナー開催などです。時代のニーズに沿ったこれらの施策が、適切な融資実績を伸ばし、支える一助となっていると言えます。
また、多岐にわたる融資制度のうち、自分はどの制度を使えるのか等も専門スタッフに相談した方が確実ですよね。ここでは、借り入れに関する相談窓口についてまとめました。
4-1 創業サポートデスク(平日の創業相談)
国民生活事業の一環で、平成24年4月に全国152支店に「創業サポートデスク」が設置されました。創業サポートデスクによる平日の創業相談は予約不要です。専任スタッフが、創業の準備段階に応じたさまざまな相談内容について個別サポートしています。例えば
・自分のビジネスアイディアを聞いてもらいたい
・事業計画、創業計画の立て方を知りたい
・日本政策公庫の融資制度など、資金調達の方法を相談したい
・収支計画を作る時の検討項目を知りたい
・創業するにはどんな資格や許認可が必要か
・創業に役立つ情報がほしい
などの相談に応じています。
どうしても予約したい場合は、直接最寄りの支店に電話するか、後述する「4-3 創業相談予約」ページよりインターネット予約が可能です。
4-2 休日・夜間の創業相談
休日、夜間の創業相談は各地域のビジネスサポートプラザで対応しています。こちらは予約制です。最寄りのビジネスサポートプラザ「予約・問い合わせ先」あてに電話で問い合わせしましょう。または、後述の「4-3 創業相談予約」ページからインターネット予約が可能です。
4-3 創業相談予約(インターネット予約)
各種相談予約を希望する場合は、下記URL「創業相談予約」ページから予約が可能です。
「創業相談予約」では、下記のような予約・相談を行うことができます。
①予約相談
事業資金(創業資金を含む)の融資利用について、直接来店して相談したい場合の予約ができる。
②創業メール相談
新規開業ローンの制度と申込手続きについて、メールで相談できる。
③創業資料請求
創業に役立つ資料や新規開業ローンの制度内容について、インターネット画面から資料請求ができる。
4-4 融資相談に関する問合せ先
融資相談に関する問合せ、事業資金相談ダイヤル、創業ホットライン、教育ローンコールセンターの利用方法については、こちらで確認できます。
4-5 全国の支店での相談
全国の支店でも各種相談を受け付けています(支店の営業時間:平日9時~17時)。全国の支店連絡先はこちらから確認できます。
また、全国の商工会議所や支援機関でも日本政策金融公庫の出張相談を行っています(予約制)。各地の出張相談日はこちらで確認できます。
5.まとめ
いかがでしたか?
日本政策金融公庫がどのような融資制度を扱っているか、お分かりいただけたでしょうか。
新たに起業する創業者向けの融資、事業を多角展開する第二創業、あるいはセーフティネット貸付など、事業の状況に合わせた多彩な融資制度が用意されています。
中小企業の経営者で事業資金の調達をお考えの方は、ぜひ安全で、中小個人企業への融資に積極的な日本政策金融公庫からの借り入れを検討してみてくださいね。
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