「日本政策金融公庫」って、ご存知ですか?事業を営んでいる方なら、名前くらいは聞いたことがあるかと思います。創業者や中小企業の経営者が、資金調達の手段として真っ先に思いつくのが日本政策金融公庫からの借り入れではないでしょうか。
でも日ごろ馴染みがないだけに、日本政策金融公庫がどんな会社なのか、どんな借り入れができるのか、分からないことだらけで不安だなとお思いではありませんか?
・日本政策金融公庫ってどんな金融機関なの?他金融機関との違いがよく分からない。
・どこで借り入れすればいいか迷っている。日本政策金融公庫は借り入れしやすいって本当?
・開業資金の調達ができず困っている。
こんな疑問やお悩みを抱えている個人事業、中小企業の経営者の方にぜひ読んでいただきたい内容です。特にこれから起業、開業される方は必見です!
この記事を読めば、日本政策金融公庫がどんな金融機関なのか、どうして創業者や中小企業の経営者が日本政策金融公庫を利用しようと考えるのかが分かると思います。安全な借り入れに漕ぎつける一助となること間違いなし!ぜひ参考にしてみてください。
1.日本政策金融公庫とは
ここでは、日本政策金融公庫がどんな会社なのか、どんな事業を行っているかをご紹介します。
1-1 日本政策金融公庫って、どんな会社なの?
日本政策金融公庫は、正式名称は『株式会社 日本政策金融公庫』。政府系金融機関であった「国民生活金融公庫」、「農林漁業金融公庫」、「中小企業金融公庫」の3つが前身で、平成20年に統合し新たに発足した株式会社です。略して「日本公庫」と呼ばれることもあります。株式会社ですが、株は全て政府所有なので、バリバリの政府系金融機関であることには変わりがありません。信頼性は、もちろん抜群です。
1-2 どんな仕事をしているの?
日本政策金融公庫が行っている事業は、主に以下のようなものがあります。
<< 国内金融業務 >>
①国民生活事業(旧国民生活金融公庫) – 国民一般の資金調達支援
国民生活事業は、地域の身近な金融機関として、小規模事業者や創業企業への事業資金融資のほか、子供の教育資金融資などを行っています。
・開業者や小さなお店、会社に対する融資
・セーフティネット機能を発揮(経営環境変化対応資金。一時的な経営状態悪化の際の貸付)
・創業企業、事業再生等を支援
・ソーシャルビジネス、海外展開を支援
・商工会議所・商工会、生活衛生同業組合などと連携
・教育ローンによる支援など(現在、縮小中)
②中小企業事業(旧中小企業金融公庫) – 中小企業の資金調達支援、信用保険制度
一般国民や零細企業ではなく、それなりの規模の中小企業を対象に、資金調達支援を行っています。
・国内の中小企業への融資
・信用保険制度の運用
③農林水産事業(旧農林漁業金融公庫) – 農林水産事業者の資金調達支援
農林水産事業は、農林漁業や食品産業の事業者への融資を行っています。
・農業、漁業、林業を営んでいる人向けの融資
・食品産業への融資
・経営支援
<< 危機対応円滑化業務 >>
政府系金融機関として、一般金融機関では行っていない特殊な業務を行っています。
・金融秩序の混乱、大規模な災害等による被害への対処
2. どのような人が、どのような時に日本政策金融公庫を利用しているの?
日本政策金融公庫がどんな会社なのか、だいたいお分かりいただけましたか?
次は、どのような人が、どのような時に日本政策金融公庫を利用しているのか、気になりますよね。日本政策金融公庫を利用しているのは、主に
・民間金融機関で融資を受けられなかった中小個人企業
・新たに起業する人、起業して間もない時期に融資が必要な人
です。詳しく見ていきましょう。
2-1 民間金融機関で融資を受けられなかった中小個人企業
日本政策金融公庫の国民生活事業の融資先は「中小企業」です。中でも特に小企業が中心で、その半数は個人企業となっています。
総務庁「事業所・企業統計調査」によれば、中小企業数(会社数+個人事業者数)は、約432.6万社。全企業数に占める割合は99.7%にも上るんですよ、ご存知でしたか?日本の会社のほとんどが個人事業を含めた中小企業ということになります。
しかし、中小企業、中でも小企業は「担保力が低い」「帳簿等の整備が不十分」などの理由から、民間金融機関は融資に前向きではありません。これに対し、政府系金融機関である日本政策金融公庫は、中小企業支援政策の一環として運営されています。中小企業を支援するための金融機関なので、もちろん融資に前向きです。融資先の約9割は従業者9人以下の規模で、個人・法人別でも個人企業が約半数を占めています。また、金融業、投機的事業、一部の遊興娯楽業等の業種は除き、原則として誰でも(どんな業種の事業主でも)融資を受けられることもポイントです。必然的に、民間金融機関で融資を受けられなかった中小個人企業が利用することになります。
2-2 新たに起業する人、起業して間もない時期に融資が必要な人
前述のような理由で民間金融機関から中小企業への融資を取り付けるのは非常に難しいのですが、新規開業する事業者への融資はさらに厳しくなっています。何しろ会社としての運営実績がないのですから、返済能力の判断が難しく、融資する側にとってはリスクが大きいのです。創業して間もない時期に事業資金を必要とする場合も、民間金融機関はほとんど融資に応じてくれないでしょう。
これに対し、政府系金融機関である日本政策金融公庫は、中小企業支援政策の一環として運営されています。中小企業を支援するための金融機関である日本政策金融公庫は、融資先は小企業が中心です。しかも、詳しくは「3-2 起業・独立時の開業資金の融資を受けられる」でご紹介しますが、他の民間金融機関にはない創業融資制度があるのです。新たに起業する人、起業して間もない時期に融資が必要な人が真っ先に利用を検討するのも、当然のことと言えます。
3.日本政策金融公庫で融資を受けるべき3つの理由
これまでの章で、日本政策金融公庫は中小企業の事業者が利用しやすい金融機関だということはお分かりいただけたと思います。
では「日本政策金融公庫は借り入れしやすい」と言われているのは、一体なぜなのでしょうか?その理由は、日本政策金融公庫の融資制度の特徴にあります。
日本政策金融公庫の融資制度にはいろいろなものがありますが、大きく分けて
・低金利な上、長期間借りられる
・起業・独立時の開業資金の融資を受けられる
・さまざまな特色ある融資制度
の3つの特徴が挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 低金利な上、長期間借りられる
日本政策金融公庫では、利息が低金利で返済期間も長期に設定されています。長期間の借り入れでも、大企業に適用される長期プライムレートと同水準の低金利で融資が受けられます。
また、他の金融機関では1年程度の短期間での融資となることが多いですが、日本政策金融公庫では長期の融資が利用可能。運転資金は5年以内、設備資金は10年以内、特定設備資金は20年以内といった非常に長い期間での融資を受けることができます。返済しやすいという観点からも「借りやすい」融資制度と言えそうです。
なお、利用する融資制度や利用条件によって利率が異なります。詳しくは日本政策金融公庫の公式ホームページで確認してみてください。
3-2 起業・独立時の開業資金の融資を受けられる
当たり前のことですが、貸したものを返してもらえない可能性があるなら、誰だって貸したくないですよね。民間金融機関は営利目的で融資事業を行っているので、そういった面は特に敏感で決してリスクは冒しません。小企業、あるいは起業・独立開業したばかりの事業者への融資は、ほぼ無理だと思ってよいでしょう。
これに対し、前章でもご紹介した通り、日本政策金融公庫は政府系金融機関。中小企業支援政策の一環として運営されており、民間金融機関で扱われない部分の補完を行う会社です。そのため、小企業、あるいは起業・独立開業したばかりの事業主にも融資をしてくれる可能性が高くなっています。これは他の民間金融機関にはない特徴で、創業者が日本政策金融公庫での借り入れを最初に検討する大きな理由でもあります。これから起業・独立開業する方にとっては、一番オススメの金融機関だと言えます。
3-3 さまざまな特色のある融資制度
日本政策金融公庫では、民間金融機関では扱っていないような融資も積極的に行っています。例えば、
・再チャレンジ融資・・・過去に事業に失敗した人を対象とした貸付。
・新創業融資制度・・・無担保・無保証型の融資。事業内容や自己資金等に制約あり。
・経営改善貸付・・・商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる制度(商工会議所、商工会の推薦が必要)。
などです。
無担保・無保証人で利用できる融資制度もいくつかあります。自分の事業形態、資金状況に合った融資制度の利用を相談できるため、一般的な定型融資制度よりも借りやすいと言えるでしょう。
また、新規開業資金のほか、女性や若者、シニア起業家支援資金、経営の多角化や事業転換による第二創業を図る方への貸付など、民間金融機関では扱っていない融資制度が多数用意されていることも大きな特徴となっています。
これらの理由から「日本政策金融公庫ではお金を借りやすい」と言われています。制度的な間口が広いといった印象です。提出を求められる「事業計画書」の作成が比較的容易で、民間金融機関に比べて提出書類が少なくて済む仕組みになっていますが、そこは政府主体の金融事業ですから「国民の誰もが利用できる」というスタンスが感じられる点でもあります。
でもだからと言って、決して「簡単に」借りられるわけではありません。審査はしっかり行われますので、そこは誤解なきように!ただ、事前にきちんと準備しておけば問題なく手続きを進められるであろうという意味では、比較的「借りやすい」と言えるかもしれません。
4. 日本政策金融公庫で融資を申し込むに当たり知っておきたいこと
政府系金融機関としての役割を有し、創業・小企業であっても融資を受けられる日本政策金融公庫。多くの中小企業の駆け込み寺のような存在であり、「中小企業でも事業資金を借りやすい」というのは、これまでの章でご説明してきた通り、本当です。
しかし、中には「日本政策金融公庫なら簡単に借りられる」「審査が緩い」など、誤った認識を持っている人もいるようです。日本政策金融公庫の創業融資では、実際は4割程度の企業しか希望額の融資を受けられていないのが現状です。申し込みには所定の書類提出が必要で、審査や面談も行われます。民間金融機関に比べ制度としての間口は広くなっていますが、決して審査が緩いから借りやすいというわけではありません。
ここでは、日本政策金融公庫での融資申し込むに当たり、事前に知っておくべきポイントをご紹介したいと思います。
4-1 申し込み時に必要な書類
どの融資制度に申し込むかによって必要書類は異なりますが、共通で必要な書類は下記のようなものがあります。
① 借入申込書(公式サイトからダウンロード可能)
② 直近二期分の確定申告書
③ 決済後半年を経過している場合は、最新の試算表
④ 法人の登記簿謄本(法人の場合)
⑤ 身分証明書(運転免許証やパスポート等)
⑥ 企業概要書
⑦ 事業計画書(資金の使いみちや事業の営業状況、計画、資産・負債がわかる資料)
⑧ その他
・ 創業計画書(新たに事業を始める、または事業を開始して間もない場合に必要。公式サイトからダウンロード可能、独自書式での作成も可)
・ 設備資金を申し込む場合はその見積書
・ 担保を希望する場合は、不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
・ 生活衛生関係の事業を営む方は、都道府県知事の「推せん書」または、生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」
上記のような書類を元に、審査・面談が行われます。
4-2 モノの貸し借りは「信用」がすべて
融資の採否を決めるのは書類上の数字だけではありません。意外と厳しい面もあるのです。
例えば、現在いくら業績がよかったとしても、1年以内に公共料金・家賃の滞納や未納、税金の未納があると、それだけで融資を断られることがあります。逆に、赤字や直近の財務内容が悪かったとしても、契約書等で今後の入金予定が確約されていたり、実現性の高い事業計画が立てられている場合は、希望通りの融資が実現することもあるようです。ポイントは「日本政策金融公庫を納得させられるだけの、根拠ある事業計画かどうか」という点になりそうです。
また、お金に限らず、モノの貸し借りは「信用」がすべて。あなたが経営者として「信用に値するかどうか」が審査結果を大きく左右することも忘れてはなりません。融資の相談の時点から面談に至るまで、経営者としての姿勢がチェックされているのです。例えば、提出する書類の書き方一つとっても、全て記入例を丸写ししたものと、熱意溢れる資料を添付した事業計画書とでは当然印象が違ってくるでしょう。
日本政策金融公庫は「国の融資だから誰でも気軽に申し込める」という認識は、確かに間違ってはいません。ですが、経営者として「あの社長、大丈夫なんだろうか?」という不信感を与えてしまっては、融資可決は当然難しくなります。日本政策金融公庫は、事業規模は小さくても「返済能力がある」「発展の見込みがある」経営者に融資協力したいのです。そして将来「地域の発展や雇用創出に役立つ企業」となってくれることを期待しているのです。
この記事を読んでいるあなたには、ぜひ実現性の高い事業計画を持って借り入れの申し込みをしてほしいと思うのです。無理のない借り入れと返済でコツコツと実績を積み重ねていけば、あなたは「信頼できる経営者」と評価されます。一度も借りたことがない人より、借りてきちんと返した人の方が信用できると見なされるのです。日本政策金融公庫では「借り換え」こそできませんが、コツコツ積み重ねたその小さな信用は、さらに資金が必要になった際に「追加融資」を受けられるなど、いずれ大きな意味を持つことになるでしょう。
大事なことなので繰り返します。モノの貸し借りは「信用」がすべてですよ!
5. 借り入れまでの流れ
日本政策金融公庫で融資を受けるまでの、手続きの流れを簡単にご紹介します。個人事業、中小企業(法人)、創業時の場合で、それぞれ必要書類等は異なるため、ご自身のケースに合ったものを用意することになります。
①相談
・最寄りの日本政策金融公庫の支店窓口に相談に行く。
・電話や、最寄りの商工会議所での定例相談の場でも相談は可能。
・申込書や事業計画書などの必要書類を準備する(公式サイトからのダウンロードも可能)。
②書類の作成
・申込書や事業計画書などの必要書類を作成する。
・都道府県知事や商工会議所の推薦状が必要な制度を利用する場合は別途手配が必要。
③申し込み
・作成した書類と、必要書類を添付して融資を申し込む。
・申し込みは持参、郵送、ホームページからでも可能。ホームページから申し込む場合、提出書類は後日郵送する。
④面談・審査
・申し込みから1~2週間後に各支店で面談が行われる。
・現地店舗や工場を視察する場合もある。
⑤融資決定、契約
・1~2週間後に融資の採否が決定する。
・融資が決まると、借用証書など契約に必要な書類が契約センター又は支店から届く。
・必要事項を記入し日本政策金融公庫の窓口で手続きする。
⑥融資実行・返済
・融資金は金融機関の口座へ振込まれる。
・返済は原則として月賦払いとなる(法人の場合は口座振替)。
順調に行けば、相談から約1ヶ月程度で融資を受けられます。
相談すればすぐに融資してもらえるというわけではないので、時間に余裕を持って準備することが大切です。
6.まとめ
いかがでしたか?
日本政策金融公庫が、個人事業や中小企業の資金調達に前向きな金融機関だということがお分かりいただけたでしょうか。
「借金なんかしたらもう人生終わりだ・・・」的な印象が大きかった以前に比べ、借り入れそのものに対するイメージはだいぶクリーンになってきたように思います。ですが、借り入れは借り入れ。借りたら当然期限までに返済しなくてはなりませんし、利息もつきます。『誰から借りるのか』これが非常に重要なポイントです。ここで安易にサラ金などに手を出そうものなら・・・自分のみならず、家族や友人知人、従業員や取引先まで巻き込んで、それこそ人生終わってしまうような事態になりかねません!
個人事業や中小企業の経営者で事業資金の調達をお考えの方は、ぜひ日本政策金融公庫からの借り入れを検討してみてください。特に、これから起業、開業する方は実質的に日本政策金融公庫を利用する以外に、安全な方法はないと言っても過言ではありません。この記事を参考に、ぜひじっくり検討してみてくださいね。
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